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2019年のITトレンドまとめ AIの進化とデータはエッジへ

インターネットの幕開けとともに、ITによる技術革新から四半世紀の時を経た現在は、次々と先端技術が現れる時代となりました。特に2017年以降に発展した、社会を根底から変えるような技術は、すでに身近なサービスへと形を変えて日常生活の中に提供されています。今後ますます活用の場が広がると予測される、ITトレンドの行方を追っていきます。

2018年のITトレンドを振り返る

2018年は既存のシステムとテクノロジーが融合した、FinTech、EdTechといった「〇〇テック」という言葉があちこちで聞かれるようになった年でした。ITが市場やビジネスに深く浸透し、ツールを超えた存在として認識されてきていることがわかります。まずは、2018年のITトレンドを振り返ってみましょう。

・次世代移動通信システム5G試験の本格化

総務省では大手通信企業各社参加の下、5Gの総合的な実証試験を開始しました。ゲーム機から家電、さらには自動車までがネット接続する時代にあって、求められるのはより高速で大容量の通信インフラです。第5世代モバイル通信システム(5G)は、既存の3G、4Gを上回る「超高速」「多数接続」「超低遅延」の、次世代型移動通信システムとして開発が進められています。

5Gに求められる条件は、既存システムの1000 倍のシステム容量や100 倍の接続機器数、10Gbps 以上のピーク速度、1 ミリ秒以下の遅延に加え、低消費電力化という厳しいものです。しかし、既存の通信回線では、増大する端末からの要求に応えられないことが明らかです。2020年の実用化に向けた取り組みが期待されています。

・AIの自動化から自律化への動きが加速

AIは今、教え込まれたデータを教えられた手順で活用する時代から、自らが知識を取り込み、自らが作り出すルールによって処理を進める段階へと到達しています。AIの歴史はコンピューターの登場に伴う「第一次人工知能ブーム」、エキスパートシステムが注目を浴びた「第二次人工知能ブーム」、そして「機械学習」から「ディープラーニング」へと進化を遂げ、現在に至る「第三次人工知能ブーム」を経てきました。

人工知能が加速度的に進化し、人間の知性を超えるシンギュラリティ(技術的特異点)が議論の的となっていますが、人類の英知を超えるかどうかは別としてもAIとの新たな付き合い方が始まっていることは間違いありません。AI自律化のもっとも身近な例としては、自動運転システムがあげられます。すでに米国では、屋外での自動運転試験が実施されています。

瞬時に状況判断を下しながら安全に運転操作を行うためには、これまでの自動化だけでは対応が不可能とされてきました。そのほかにも、医療現場、工場の管理システムなど、さまざま用途でAIの自律化が進められています。天文学的なデータ量が集積するビッグデータから即時に必要な情報を選択し、人間には想像もできない計算方法で解を導く自律型AIが各分野へ導入されることにより、業務やビジネスの課題解決へとつながる期待が高まっています。

・音声検索対応サービスの拡充

Amazon Echo、Googleアシスタントの普及により、音声による操作はスマートフォンを離れ、自宅や街角など、至るところで活用が進んでいます。スマートスピーカーを搭載したホテルや賃貸物件など、既存サービスに音声アシスタントを付加した商品も続々と登場しています。音声検索対応サービスではすでに音楽配信やニュース、天気予報などがなじみ深いものとなっていますが、最近では人気グルメサイトが飲食店音声予約システムを導入するなど、サービスの多様化が進められています。

音声検索は、ウェアラブルデバイスの普及による端末操作の多様性に加え、高齢化社会に対応する世代間バリアフリーやユニバーサル化の観点からも、歓迎されるものです。いずれは検索の半数を音声検索が占めるとの予測もあり、今後はさらに広がりが見られそうです。世界的検索エンジンでも検索アルゴリズムでの音声検索対策がなされており、以前よりも精度の高い検索結果表示が実現しつつあります。これを受けて今後はWebサイト側にも、音声検索に対応した戦略が求められる可能性が高いでしょう。

2019年のトレンド(1)AIの導入が本格化

Gartnerが発表した2019年のITトレンド予測によると、一般企業や家庭などでもAIの導入が本格化し、AIの進化がより加速していくことは確実と見られています。Gartnerで今回発表しているITトレンドは、個々が単独で展開するものではありません。融合と重複、相互作用によりテクノロジーのさまざまなものがつながり、インフラ化するためのプラットフォームの構築に貢献すると述べています。

その中でもAIはすべての領域で大きな役割をもち、社会や産業のあり方に大きな変革をもたらす存在となります。2018年の振り返りでも見てきたように、自動車やドローンなどの運転作業をAIに任せることで、「自律的なモノ」が増加。くり返しや組み合わせの応用ではなく、周囲環境の察知とそれにマッチした対応や人間とのより自然な対話の精度が高められていくでしょう。

開発現場においても、AIの果たす役割は補佐的なものから主軸へとスタンスが移りつつあります。すでに、これまでの開発プロセスで人間が行っていた多くの作業は、AI導入によるエコシステムへと置き換わっているのです。2019年には、これに加えてAIが開発プロセス自体にも利用される「AI主導開発」が始まり、やがてはAIが共同開発者となるプロジェクトが主流となると見られています。AIが技術者と深く連携し、ソリューションの開発に携わる時代が到来するといえるのではないでしょうか。

AIが実現する拡張アナリティクスは、専門的なデータサイエンティストを脅かす存在となりそうです。現代社会においてはすべての分野においてデータ分析が戦略の要となっており、膨大な情報量によって、その業務は日々複雑化しています。これまで高度な技術をもった一部の専門家のみが可能としていたデータアナリティクスは、機械学習・AIを組み込んだ分析システムによって汎用性の高いものとなり、各分野へと浸透していきます。

拡張アナリティクスによってデータ分析がどの規模の企業や組織でも活用できるようになり、精度の高い情報で緻密な戦略の実現が可能となるでしょう。販売やマーケティング、顧客サービス、流通といった外的な企業活動および人事や財務の管理部門に至るまで、それぞれに適したアプリケーションに拡張アナリティクスが適用され、人間の行動や意志決定をも最適化される未来が始まります。

2019年のトレンド(2)人とITとのかかわりの変化

デジタル倫理とプライバシー保護の意識が一般消費者の間にも高まり、国や組織、企業の取り組み、また国際間でのルールに対して厳しい目が注がれるようになります。情報化社会の急激な進化によって、個人はいまだ経験したことのないプライバシー情報への不安感を抱くことになるでしょう。消費者は、データのプライバシーを正しく保護ができない企業に対し、大きな不信感をもちます。

個人が感じている不安は企業に対してだけではなく、国やそれに準ずる組織にもあります。個人情報の使われ方、安全な保管についての姿勢が問われるでしょう。デジタル倫理とプライバシー保護への不安は市場への大きな影響となって表れ、また国家の責任についての議論も高まっていくと考えられます。

「没入型エクスペリエンス」は、SF映画の中のものではなく汎用性の高い技術として身近になっていくでしょう。CGで作られた世界は、視覚的に映像世界を体感するVR(仮想現実)から、ポケモンGOやカメラアプリのSNOWなど、現実世界とシンクロするAR(拡張現実)、さらに触覚による確認や操作を可能としたMR(複合現実)へと広がりを見せています。

こうした技術をベースに、人間が体験やコミュニケーションを得る「没入型エクスペリエンス」は、さまざまな分野に無限の可能性を与えているのです。バーチャルツアーといった遊興への利用はもちろん、建築業界、医療分野などではすでにMRの活用が進み、実用に耐えうることが証明されています。また、自動車メーカー車両の設計への活用、日本では、航空機の操縦やエンジン整備の訓練へ採用など、先進的な大手企業が取り入れている例も増加傾向です。

世界中のビジネスマンが自国のオフィスで握手を交わしたりする時代はそれほど遠くもないかもしれません。採用・人事・育成など、これまで人手を介してしかできないと思われてきた分野についても、IT活用が進むと予測されています。HR Tech(HRテック)のサービス活用により、人事データの一元管理と可視化が実現するとともに、分析が容易となるでしょう。

クラウドやAI、ビッグデータ解析といった新しい技術の活用で、これまでの雇用や人事管理の課題解決を促します。データによって最適化された適材適所への配置は、従業員満足度の向上が図られるとともに、人的リソースを無駄なく活用することで労働人口減少への対策としても期待されているのです。HRテックは、求人・マッチング、採用管理から人材のタレントマネジメント、勤怠管理や給与計算、福利厚生・教育、さらに組織改善や社内コミュニケーションまでと幅広い用途へ対応しています。

人材管理や総務系の古い領域に先進的な技術を投入することで、規制や常識にとらわれない新たな視点を加えることが可能です。人事担当者の煩雑な作業が大幅に軽減され、企業全体での業務効率の向上にも貢献します。

2019年のトレンド(3)データは膨大化し、クラウドやエッジへと変化する

Gartnerでは、今後データセンターはなくなりサーバーレスへ移行していくことを予測しています。日々更新されるスマートデバイスの高性能化、IoTデバイスの開発ラッシュ、自動運転を完全化するコネクテッド・カーの登場など、すべての機器がネットワーク上に存在し、それぞれが必要とするデータは肥大化する一方です。

各デバイスがネットワークにつながるIoTでは、手元のデバイスとクラウド上のデータセンター間を膨大な量の情報が行き来しています。現在のクラウドコンピューティングのままではデータ量の増大による負荷で、通信速度の遅延の恐れが心配されます。

そこで、クラウドに集約されていたデータ処理を、各自の端末側で処理し、負荷を分散するエッジコンピューティングという手法が注目されています。

エッジコンピューティングでは、すべてのデータをクラウドに送って処理するのではなく、各端末でできることは各端末でデータ処理します。それにより負荷が分散され、より高速にデータ処理が行える手法です。

各端末で処理することにより、ネットワークの伝送量を抑え、通信の遅延時間が解消されます。

エッジコンピューティングでは、個人がそれぞれ手にするエンドポイントデバイス、あるいは周辺環境に組み込まれたエンドポイントデバイスが、「エッジ」となるのです。Gartnerによると、今後5年間にエッジデバイスは大きな進化を遂げ、専用AIチップや高い処理能力のプロセッサ、またストレージといった機能が付加されていくと予想されています。

日本でも2020年をにらんで5Gの実用化を目指していますが、整備されたエッジコンピューティング環境は「超高速」「多数接続」「超低遅延」の次世代通信システムを介して中央サービスと接続されるようになるでしょう。これが「エンパワードエッジ」と呼ばれるシステムです。5Gの成熟化に伴い、各企業では拡大するエッジコンピューティング環境におけるインフラの配備や管理を見直す必要に迫られることが予想されます。

特に、組み込みIoT環境では、既存の産業システムの混在により、管理は大きな問題となっていくでしょう。社会全体のネットワーク化への要求に対して、将来を見据えた企業の対応が急務となっています。さらなる進化を遂げるテクノロジーをどこまで活用し、企業戦略に組み込んでいけるかが大きなカギとなりそうです。

まとめ

Gartner の発表では引き続き、テクノロジーのさまざまなものがインフラ化してつながる、プラットフォーム的なものがトレンドの大きなけん引役となることが語られています。2019年は、デジタル化されたあらゆるものをつなぐ世界的なインフラがさらに強固なものとなる過程といえるでしょう。VRからAR、MR、機械学習からディープラーニングなど、先端技術として認知され、耳になじむ頃には、すでに身近となるほど流れの速い現代社会にあって、企業に一時の停滞も許されません。

企業がこれらのテクノロジーを実行するにあたっては、インフラ強化とともに、それを実際に使用する人々のITへのかかわり方の変化を受け入れる柔軟性が求められています。どれほど優れた技術であっても、導入の方向性を間違えれば成果には結びつかず、無駄に時間とコストをかけるだけです。IT技術をどう受け入れ、何を目指すのかを決めるためは、時代の流れに沿ったテクノロジーと人間との関係性から理解する必要がありそうです。

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